株式会社大林組は、1892年創業の日本を代表する総合建設会社。国内外に幅広く拠点を構え、超高層ビルやダム、橋梁、トンネルなどの社会インフラ整備から都市再開発、さらには海外プロジェクトまで多岐にわたる実績を持ちます。近年はリニューアル工事や維持管理分野にも注力し、豊富な経験と最新技術を融合させて社会の持続的発展に貢献しています。
今回の事例では、大林組がトンネル補強工事においてHatsulyを導入し、現場の大幅な効率化に取り組みました。
【目次】
-大林組 白井様
現場の課題とDXの必要性
ーまずは、御社や今回の現場について教えてください
白井様:当社は総合建設業として、土木分野では高速道路のリニューアル工事やインフラ施設の新設工事など多岐にわたる工種の建設現場で施工管理を行っています。
今回の現場は「東北自動車道 竜ヶ森トンネル補強工事」。供用中の高速道路トンネルにおいて、上下線それぞれ約2km にわたり、監視員通路の補修や覆工部分の補強を行っています。特に監視員通路の補修では、下り線で約2,140 箇所、上り線で約660 箇所という膨大な修復箇所がある現場です。
ー従来の出来形管理でどのような課題があったのでしょうか?
白井様:補修のための断面修復前に行う斫りの出来形測定は、従来2~3 名程度で実施しなければいけなかったため、人員・時間がかかりすぎる点が課題でした。また、事務所から現場までの移動だけで往復約60 分かかるため、1 回の立会いでの現場までの移動と立会いにかかる時間(約1 時間/回)が合わせて約2 時間。修復箇所が非常に多く、原則全数立会いのため、週に2~3 回の立会を毎週こなしていました。
そのため、週に4〜6 時間は移動と立会いに時間を要していました。これが下り線では2 か月間に及ぶ工種だったため、合計25 回ほどの立会いを行っており、従来手法では大きな負担になっていました。
Hatsulyとの出会いと導入の決断
ーHatsuly を知ったきっかけは?
白井様:インターネット検索で見つけました。補修工事が増えている中で「断面修復の出来形管理を効率化できるシステムがあるはず」と思い調べたところHatsuly にたどり着きました。
さらに、大林組の他現場でDataLabs の別プロダクト「Modely(3D 配筋検査システム)」を導入していると聞き、同じ提供元のシステムなら安心できると感じ、検討を進めました。
ー導入を決めたポイントは?
白井様:新しい技術に挑戦しないと会社も人も成長しないと思っています。そのため、まずはやってみるという姿勢で検討をしました。加えて、最初のデモで従来計測との誤差がないことを確認でき、運用面でも現場で実際に活用できそうだという手ごたえがありました。精度と運用の両面で効果を見込めると判断し、導入を決めました。
ー発注者との協議ではどのように進められたのでしょうか?
白井様:最初に施工管理者へデモを行い、精度が問題ないことを確認していただきました。そのうえで発注者に説明する際には、発注者側にもメリットがあることを説明しました。 立会いのために現場へ足を運ぶ必要がなくなることは、発注者にとっても大きな負担軽減になります。
その結果発注者にも納得いただき、上り線からHatsuly を本格導入し、現地での立会いではなく、遠隔立会に変更することができました。当現場の発注者は、最新技術などの導入にもこちらの考えを尊重していただけるので、とても助かりました。協議の場では自らの利点だけではなく、発注者の利点もきちんと伝えることが大事だと感じています。
現場にもたらした効果と今後の可能性
ー実際に活用してみて、どのような効果がありましたか?
白井様:一番大きいのは現地での立会い削減です。移動・調整・現地での立会時の計測の負担がなくなり、週あたり4〜6 時間の削減につながりました。また、従来は2〜3 名での作業が必要でしたが、Hatsuly では基本的に1 人で対応可能になりました。
さらに、現場での作業が減り、作業の多くの部分をデスクワークでできるようになったことは、作業性、安全性の観点からもメリットであると感じています。
ー現場での使いやすさや、操作性はいかがでしたか?
白井様:Hatsuly は直感的に操作できる点が良いです。余計な機能が前面に出てこないので、初めて使う人でも迷わず扱えます。クリックして計測点を選ぶだけで分かりやすいと感じました。
新しいシステムに使い慣れていない人でも、拒否反応が少ないと思います。
ー課題や改善してほしい点はありますか?
白井様: 点群取得は撮影者の技量や現場環境、点群取得アプリの種類によって品質に差がでることもあり、部分的には撮り直しや撮影の補助(斫り端部を明確にするために定規を当てる等)も発生しました。
現場条件に応じて最適な点群取得アプリを選定することで、より安心して運用できると思います。
ー最後に、Hatsuly をどんな現場におすすめしたいですか?
白井様: 比較的小さい面積の 計測箇所が大量にある現場や、立会いのための現場移動が負担になる現場には特に効果的だと思います。
小規模でも数が多い案件には有効ですし、操作がシンプルなので初めてでも導入しやすいと思います。