宮城建設株式会社は、地域社会のインフラ整備から維持修繕まで幅広く手掛ける建設企業です。今回の事例では、「令和6年度久慈港諏訪下地区-6.0m岸壁老朽化対策(その5)工事」においてHatsulyを導入し、現場の大幅な効率化に取り組みました。
本プロジェクトでは、岩手県・青森県を中心に東北全域でICT活用工事のトータルサポートを行う株式会社岩手測器社が伴走し、過酷な現場環境に適したハードウェアとHatsulyの組み合わせを提案。新しい技術と現場の創意工夫により、計測作業の大幅な効率化と「出来形写真の省略」を実現しました。
ー 宮城建設株式会社 大上様
ー 株式会社岩手測器社 山影様
現場の課題とDXの必要性
ーまずは、今回の現場環境と、従来の出来形管理における課題について教えてください。
大上様: 今回の港湾維持補修の現場は、潮の満ち引きの影響を受けるため作業時間が限られていました。さらに、足場は暗いうえに普通に立つことができず、常にかがんで作業を行う必要がある非常に狭くて過酷な環境でした。
従来、こうした現場での寸法計測は、最低でも3名体制で現場に入り、無理な体勢で体力を使って行っていました。1ブロックあたり1時間から1時間半ほどかけて手作業で計測しており、潮が満ちてしまうと現場に入れなくなるため、時間的な制約と肉体的な負担が大きな課題でした。
Hatsulyとの出会いと導入の決断
ーHatsulyや3Dレーザースキャナーの導入に至った経緯を教えてください。
大上様: 当初は一般的なTLS(3Dレーザースキャナー)での計測を検討しましたが、高さ制限により現場に機器を設置できませんでした。ハンディスキャナーも試しましたが、今回の環境では精度面で課題がありました。 そこで、測量機器やICTシステム提案に強みを持つ岩手測器社の山影さんに相談したところ、背の低いレーザースキャナー(Leica BLK360 G2)とHatsulyの組み合わせをご提案いただき、導入を決定しました。
山影様: 現場の照度不足や広さの制約から、暗所や狭小空間にも対応できる最適なハードウェアとしてBLK360を選定しました。弊社では以前からDataLabs様の配筋検査システム「Modely」を取り扱っており、その後同社のシステムであるHatsulyについても取り扱いを始めました。今回の「寸法・深さ・体積を測りたい」という現場のニーズに合致すると考え提案しました。新しい技術ですので、現場の創意工夫を活かした提案ができると考えました。
現場にもたらした効果
ー実際に現場で活用してみて、どのような効果がありましたか?
大上様: 最も大きな効果は、測量から出来形測定、帳票作成までを1人で完結できるようになったことです。これまで3名で1時間以上かかっていた現場での計測作業が、1名体制かつ1ブロック15分程度で終わるようになりました。
今回の工事は基本的に梁・柱の全面をはつる工事でした。そのため、はつり前(着工前)とはつり後の計2回、点群データを取得してBefore/Afterの比較を行っています。こういった箇所でも、Hatsulyに2つの点群を合成したものを取り込むことで、寸法、面積、体積、鉄筋のかぶり、はつり深さの計測まで行うことができました。すべてソフト1つで完結できる点が非常に便利です。
また、断面修復工の後と表面被覆工の後にもそれぞれ点群データを取得し、表面被覆の出来形管理表に必要な数値なども簡単に取得できました。
現場での無理な体勢での作業がなくなり、かがんで腰を痛めることもなくなったため、肉体的な負担軽減や安全性の面でも大きな向上を実感しています。点群データさえ取ってしまえば、後からオフィスで落ち着いて確認できるため、精神的にも非常に楽になりました。
発注者との協議と「写真の省略」
ー発注者様との協議はどのように進め、どのような成果がありましたか?
大上様: 発注者である岩手県のご担当者様にHatsulyの画面とハツリ前後の点群データをお見せしたところ、ボリューム(体積)や深さが視覚的にも数値的にも明確にわかるため、「これなら写真自体なくても完結できる」とすぐにご理解いただき、結果として出来形写真の提出を省略することができました。 立会いの際も、こちらで事前にスキャンを済ませておくことで、わずか5分程度でスムーズに完了できるようになり、夜間に対応いただく発注者様の負担軽減にも繋がっています。
今後の展開とHatsulyへの期待
ー最後に、今後のHatsulyの活用アイデアや期待について教えてください。
大上様: 今回の導入により、現場での計測作業は劇的に効率化され、肉体的・精神的な負担も大きく解消されました。一方で、オフィスに戻ってからのデータ解析作業や、帳票作成のまとめ自体にはまだ多少の時間がかかっている部分もあります。各操作がさらに直感的になり、処理がよりスムーズになれば、さらに手放せないシステムになると思います。今後のアップデートに大いに期待しています。
山影様: 今後Hatsulyの機能がさらに発展し、さらに幅広い維持補修工事への展開が可能になるのではないかと期待しています。岩手測器社としても、引き続きICT活用のすべての過程で現場を強力にサポートしていきたいと考えています。